映画【Mommy(マミー)】ネタバレレビュー!林眞須美氏はえん罪だったのか?

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1998年7月25日に和歌山県和歌山市園部で発生した毒物混入・無差別殺傷事件【和歌山毒物カレー事件】。事件をテーマに据えたドキュメンタリー映画【Mommy(マミー)】をネタバレレビュー!こんなに重厚なドキュメンタリー映画は観たことがない・・・

えい
ドキュメンタリー映画【Mommy】の内容やいかに




映画【Mommy(マミー)】ネタバレレビュー感想!林眞須美氏はえん罪だったのか?

映画【Mommy(マミー)】レビュー・感想

1998年に和歌山県和歌山市園部で発生した毒物混入・無差別殺傷事件【和歌山毒物カレー事件】。ある程度の年齢を超えた人なら必ず知っている事件が、2024年8月ドキュメンタリー映画【Mommy(マミー)】となって公開されました。
※マミーは事件の被告人として起訴された林眞須美氏を指す呼称

私も”ある程度の年齢を超えた人”なので、子どもの頃に名前は聞いたことのある事件ということで映画を鑑賞に行きました。

いや・・・スゴかったです。私の知るドキュメンタリー映画って、映画テーマと関係薄そうなおっさんに適当な話を訊いて、適当につなぎ合わせたような観るに堪えない内容を想像してしまいます。

しかし映画【Mommy(マミー)】は、かなりの内容の濃さ。まずは登場人物ですが、かつて事件に携わった人物たちが総登場しているのではと思うほどの数の多さ。林眞須美氏の家族、警察・検察関係者、事件被害者親族と様々な関係者達の過去と現在がインタビュー動画によって紹介されています。

そして感じたのが、映画内容の公正さ。二村真弘監督は、かつて林眞須美氏が有罪と思っていたが、2019年に林氏の長男が出した著書を読み、ご本人と会話することで林眞須美氏には冤罪の可能性があると思い映画作りに至ったようです。「冤罪を証明したい」というコンセプトでつくられている映画とのことでしたが、偏った意見でゴリゴリ無罪を推すのではなく、多角的な視点をもって事件をみる公正さが保たれているように感じました。

    

映画【Mommy(マミー)】ネタバレ!林眞須美氏はえん罪だったのか?

えい
ここからは映画【Mommy(マミー)】のネタバレです

映画本編前に流れる映画に登場する関係者への誹謗中傷を禁ずる異例の案内。私は監督のインタビュー付映画を鑑賞しましたが、司会の方によると映画公開を妨害するかのごとく、関係者に誹謗中傷が相次いでいるとのことでした。

底知れないですね・・・人間の醜悪さは。

さて、映画本編。和歌山、もとい日本を震撼させた【和歌山毒物カレー事件】。

通報があった際の救急隊員の音声、マスコミが林氏の自宅に押し寄せるシーンなど当時の報道映像がふんだんに使われています。

そして事件に携わった人たちのインタビュー。沢山の証言者が登場します。登場人物やトピックはこんなかんじ。

  

・ジャーナリスト
マスコミの過熱する報道が事件と林眞須美氏の関連性を印象付けさせてしまったことの解説。

・林 健治氏
林眞須美氏の夫。車椅子の、どこにでもいる優しげなおじいちゃんという感想しかもてない。。林眞須美氏からの離婚届を出さずに、持ち続けていらっしゃるようです。妻の無実を信じて活動中。

・林眞須美氏の長男
顔はモザイクが入っています。すごく優しげな声で、事件の渦中の人物にもかかわらず、偏った発言はせずに達観している感すらあります。「母親を信じたい気持ちもあったが、信じ切れずにいた」という趣旨の発言が印象的でした。父親である林 健治氏の車いすを押すシーンも目頭が熱くなります。

・事件再現映像
地域の夏祭り用に自宅ガレージでカレーを作る林眞須美氏の様子を再現。カレー鍋は、2つあった模様。

・弁護士
当時林氏の正面の家に住んでいた女子高生の証言について語る弁護士。
女子高生は当初自宅1階から林氏がカレーの入った鍋のふたを開けるのをみたという証言をするも、警察の検証により自宅1階からはみえないことが判明。その後、2階からガレージの様子を見たという証言に変えている模様。

しかし女子高生宅の2階からは林家のガレージに置かれたカレーの入った鍋は2つあるうちの1つしか見ることはできず、また女子高生が見たのはヒ素の入っていない方のカレーの鍋だということが分かっているようです。
弁護市サイドで実地検証した際の貴重な写真も多々登場したのには驚きました。しかしそれは事件証拠として扱われず・・・

・SPring-8
兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出すことができる大型放射光施設。映画【科捜研の女】にも登場した研究施設ですが、この事件でSPring-8は、カレーに混入されたヒ素と林氏宅で保管されていたヒ素が同一であることを示すために使われたようです。

・東京理科大学教授だった中井泉氏
カレーに混入されたヒ素と林氏宅で保管されていたヒ素が同一だと結論づけた人物。

中井泉氏の解説に、スゴい!と感心したのですが、その直後に京都大学の教授河合潤氏のインタビューが流れ、ヒ素が同じものだと断定してはいけなかったという説が出てきます。

・京都大学 河合潤氏
前述東京理科大学教授中井氏の行った検証には問題があると訴える河合潤氏。中井氏による検証だと、あくまで林宅にあったヒ素と、カレー鍋に混入されたヒ素の原産国が同じだった程度の事しか照明されていないと証言。

Mommyに登場したヒ素分析結果

中井泉氏と河合潤氏による持論が交互に映し出され、鬼気迫る感・・・なお河合潤氏は、鑑定に問題があったことを訴えかける本も出していらっしゃるようですね。

・ヒ素の検証
和歌山に現存する名も無き空き家が登場。事件当時、ヒ素は白アリ駆除に一般的に使われていたということで、空き家の床下に残るヒ素の痕跡を映画独自に調査。使われたヒ素の成分を検証する内容が興味深い・・

・地元でタブー化された和歌山毒物カレー事件の話題
地元住民にインタビューするため、民家の玄関チャイムを鳴らす監督。しかし監督が何軒民家を渡り歩いても一様に相手にされない状況。しかしインタビューを続けることで、林氏以外にもヒ素を保管していた民家があったことを突き止める監督。されど警察が鑑定したのは、林氏が保持していたヒ素のみ・・

・林 健治氏&長男と懇意にしていたイズミ氏
林眞須美氏に惚れ、林家族と懇意にしていた人物イズミ氏登場(声のみ)。保険金のために、10回以上ヒ素入り料理を食った過去があるという驚愕の経歴持ち(汗)。イズミ氏の証言で林眞須美氏の裁判が不利になったようでしたが、イズミ氏と再会した林健治氏や長男は「あの時は大変だったね」と暖かい声をかける関係性をみせていました。何気ないシーンでしたが、映画の見所の1つだとおもいます。

・林眞須美氏長女の事件
恥ずかしながら私は知りませんでしたが、2021年に林眞須美氏長女は関西空港の連絡橋から娘さんとともに飛び降り自殺をしたようです。林眞須美氏の長男による台詞が胸を打ちました。

「名前を変えてまで幸せになろうとした姉が亡くなり、結婚など普通の生活は諦めた自分(長男)が生きている」

遺品としてヒノアラシぬいぐるみが登場していました。ヒノアラシの登場するゲーム(ポケモン金銀)が販売されたのが1999年で、 【和歌山毒物カレー事件(1998年)】の翌年というのも因縁めいたものをかんじますね。。

映画には、長男さんの好きだったゲーム「グランダー武蔵」など、懐かしい名前もちょこちょこ登場。

・保険金詐欺真相
林 健治氏のおこした保険金詐欺真相が本人によって語られたので驚きました。シロアリ駆除に使っていたヒ素をふとしたはずみに興味を持ってなめてみたことが保険金詐欺の発端というのでさらに驚き。それがもとで体調を崩し、日本生命から二億もらって味をしめていったようです。
林 健治氏による出所不明の大金の扱い方について、長男さんによって生々しいお話も語られていました。

・朝日の記者
林 健治氏がヒ素保険金詐欺してたことをすっぱ抜いた記者の顔だしインタビュー。

・林眞須美氏の無罪を信じて活動する団体
林眞須美氏の無罪を信じて活動する団体による草の根活動。地道ながらも林眞須美氏の無罪を世間へ訴えかけていきます。和歌山市代表と名乗るおっさん(ただの通行人)が登場し、団体の方とディベートをかますシーンは一触即発感もあって緊張感が高まります・・・

・警察からの供述強要
林眞須美氏が事件真犯人であることを証言するよう警察に促すよう言われたという林 健治氏。

・その他登場人物
当時の検察官、二審の裁判長、警察関係者を直接訪問して話を聴こうとする監督!冷たくあしらわれる結果となりますが、かなりの熱量を感じるシーン。

   

・・・・とトピックが盛り沢山な映画【Mommy】。ドキュメンタリー映画として質も高いので、お近くの劇場で是非観ていただきたいです。

映画『マミー』公式サイト
映画『マミー』8月3日より公開

映画の所々に挟まれる、林眞須美氏からご家族にあてられた手紙の内容。映画も手紙の一文で締められます。

 

お墓はいらない。骨はカルシウムとして食べてくれ

  

友人くん
映画のラストは、監督が和歌山県警にご厄介になるという驚愕シーン・・・!!
友人くん
事件関係者の車にGPSを付けたという理由だったとか
友人くん
監督インタビューで明かされていたが、映画の公正さを担保するために自分の非も隠さず公開したとのことだったぜ
友人くん
この映画にかける監督の信念が見えてくるな

 

映画公開時点、林真須美氏は再審を求め、和歌山地方裁判所に3回目となる申し立てをおこなっているようです。事件におけるすべての疑問が氷解しますように。

 

おしまい




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